allgreen998の備忘録

磁気モーメントの導出

磁石をどれだけ小さく分割しても、磁石の特性が残る。
これは原子レベルでの特性である。
この原子の磁気的な性質は電子雲が持っている。
原子が持つ磁気モーメントの強さは2種類の要素によって決定される。

電子が回ることによってできる磁気モーメント

この磁気モーメントは
(電子軌道が作り出す磁気モーメント)=(磁荷対がもたらす磁気モーメント)
であるというところから導出してくる。
導出としては、ともに静磁界中において原子、磁荷対にかかるトルクを見ることによって判別する。

  • 電子軌道が作り出す磁気モーメント
  • 原子を以下の図のように定義する。

    この時、電子が回ることによる電流\(I\)は
    \begin{align*} I &= \frac{e}{t}\\ &= -\frac{ev}{2 \pi r} [A]\\ \end{align*} これを静磁界\(\boldsymbol{H}[A/m]\)の中に置く。
    電子の円周上の微小な区間を\(ds[m]\)とするとと、その区間に働くベクトル\(d\boldsymbol{F}[N]\)は、
    \[ d\boldsymbol{F}=Id\boldsymbol{s}\times \mu_{0} \boldsymbol{H} \] 円周の位置\(\boldsymbol{r}\)に働くトルク\(d\boldsymbol{T}\)は
    \begin{align*} d\boldsymbol{T}&=\boldsymbol{r}\times d\boldsymbol{F}\\ &=I(\boldsymbol{r}\times d\boldsymbol{s})\times\mu_0\boldsymbol{H}\\ \end{align*} トルク\(\boldsymbol{T}\)は円周上にわたって積分することで求められるので、
    \begin{align*} \boldsymbol{T}&=\oint d\boldsymbol{T}\\ &=\frac{I}{2}(\oint \boldsymbol{r}\times d\boldsymbol{s})\times \mu_{0} \boldsymbol{H}\\ \end{align*} ここで環状電流の囲む面積\(S=\pi r^2\)、環状電流の法線単位ベクトルを\(\boldsymbol{n}\)とすると
    \begin{align*} \boldsymbol{T}&=\frac{I}{2}(\oint \boldsymbol{r}\times d\boldsymbol{s})\times \mu_{0} \boldsymbol{H}\\ &=\frac{I}{2} \cdot 2S\boldsymbol{n}\times \mu_{0}\boldsymbol{H}\\ &=\mu_{0} IS\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{H}\\ \end{align*} これより電子軌道が作り出す磁気モーメント\(\boldsymbol{T}_{current}\)は
    \[ \boldsymbol{T}_{current}=\mu_{0} IS\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{H} \] と表すことができる。

  • 磁荷対がもたらす磁気モーメント
  • 磁荷対\(+q[Wb]\),\(-q[Wb]\)のつくる磁気モーメント\(\boldsymbol{\mu}=Q\boldsymbol{r}[Wbm]\)を磁界\(\boldsymbol{H}\)中に置いたときに働くトルク\(\boldsymbol{T}_{m}[Nm]\)は、 \begin{align*} \boldsymbol{T}_{m}&=q\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{H}\\ &=\boldsymbol{\mu}\times\boldsymbol{H}\\ \end{align*} と表すことができる。

    ここで、\(\boldsymbol{T}_{current}\)と\(\boldsymbol{T}_m\)は同一のものを指すので、電流が作る磁気モーメントを\(\boldsymbol{\mu}\)を次のように表すことができる。
    \begin{align*} \boldsymbol{T}_m&=\boldsymbol{T}_{current}\\ \boldsymbol{\mu}\times\boldsymbol{H}&=\mu_{0} IS\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{H}\\ \boldsymbol{\mu}&=\mu_0 IS\boldsymbol{n}\\ \end{align*} これより、磁気モーメント\(\boldsymbol{\mu}\)は、環状電流\(I\)及び電流が囲む面積\(S\)に比例し、その無機は電流が囲む面の法線方向\(\boldsymbol{n}\)であることがわかる。
    ここで
    \[ I= -\frac{ev}{2 \pi r} \] と、
    \[ S=\pi r^2 \] を代入すると、
    \begin{align*} \boldsymbol{\mu}&=\mu_0 IS\boldsymbol{n}\\ &=\mu_0 \Bigl(-\frac{ev}{2 \pi r}\Bigr)(\pi r^2)\boldsymbol{n}\\ &=-\frac{\mu_0 evr\boldsymbol{n}}{2}\\ &=-\frac{\mu_0e\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{v}}{2}\\ \end{align*} となる。
    ここで、角運動量である\(\boldsymbol{\varGamma}\)は、
    \begin{align*} \boldsymbol{\varGamma}&=\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{p}\\ &=\boldsymbol{r}\times m\boldsymbol{v}\\ \end{align*} と、表すことができるので、これを使い表現すると、
    \[ \boldsymbol{\mu}=-\frac{\mu_0e\boldsymbol{\varGamma}}{2m} \] となる。
    これより原子磁石の磁気モーメントは電子の持つ角運動量\(\boldsymbol{\varGamma}\)に比例することがわかる。

    電子自身のスピンによってできる磁気モーメント

    参考文献

    最終更新:2020/10/10